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半側空間無視の回復はどのような流れでなされるのか?

リハビリテーションの現場で患者さんによく聞かれることばとして「この病気はよくなりますか?」というものがあります。

疾患が中枢神経疾患であった場合、予後は必ずしも良くなかったり、あるいは完全な回復というのが難しいこともありセラピストの多くは明確に答えることは避けるとは思うのですが、

それでもリハビリテーションを行う上で予後を考えることは必須であり、予後を考えた上で治療を行っていくと思います。

しかしながら、臨床現場で頻繁に遭遇する半側空間無視の予後というのは一般にどのようなものなのでしょうか。

今日取り上げる論文は、右半球損傷患者で半側空間無視のあるものとないものを対象に急性期から慢性期まで、その回復段階と脳損傷の関係について追跡的に調べたものです。

対象になったのは右半球損傷で半側空間無視のあるもの23名(平均年齢68歳)、半側空間無視のないもの10名(平均年齢72歳)で、

これらの患者を対象に急性期(発症後3ヶ月)の間、毎週、空間的注意機能、非空間的注意機能、運動機能について評価を行いその回復経過を調べ、またCT画像をもとに、どの領域の損傷が半側空間無視に関連しているかについて調べています。

結果を述べると

・半側空間無視の回復は急性期の最後の時期に見られ、慢性期(3ヶ月以後)も見られる

・慢性期における半側空間無視の回復は上肢機能の回復と並行して進行する

・半側空間無視に関わる損傷領域は前頭頭頂領域であり、この領域の損傷が大きいと半側空間無視症状の遷延化しやすい

ということが示されています。

また上肢機能の回復と半側空間無視の回復が並行して起こっていることから半側空間無視の回復不良は運動機能の回復の否定的因子として捉えることができるのではないかということも述べられています。

よくなりそう、難しそうというのは経験を積んだセラピストであれば、理由をうまく言葉にできないにしても予想がつくことが多いと思うのですが、やはり予後を推定するのはなかなか難しいなと思いました。

 

参考URL:Patterns of spontaneous recovery of neglect and associated disorders in acute right brain-damaged patients

目的:急性期の無視症状の自発的な回復がどのようなパターンでなされるかについて認知面と運動面の両方から評価を行った。また無視症状の回復に関わる神経基盤を探るために損傷領域の回復についても調査した。

方法:半側空間無視を示す右半球損傷患者と半側空間無視を示さない右半球損傷患者を対象に急性期における評価を毎週行った。評価バッテリーは無視症状、無視に関連した症状および運動障害を評価するものを用いた。同じ対象年齢に調整した健常被験者が非側方性の注意障害がないか調査された。半側空間無視を示した患者のうち複数名は引き続き慢性期においても評価された。

結果:半側空間無視の回復は急性期の最後の時期と慢性期に見られていた。空間的注意障害は半側空間無視を示す患者の急性期に認められたが、非空間的注意障害は右半球損傷患者で半側空間無視のあるものにもないものにも認められた。半側空間無視は前頭頭頂領域の損傷との強い関連が認められた。この領域の損傷は無視症状の遷延に関連していた。また慢性期においては無視症状の回復は上肢機能の回復と並行して起こっており、このことから無視症状は運動機能のネガティブな予想因子になることが考えられた。

結論:これらの結果から空間注意障害は急性期に回復を示すが、これは割合的には対象となった患者の半数以下であることが示された。左視空間無視はより後期である慢性期において回復が見られるが、その回復は完全なものではなかった。

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