見えないけれど、つかめる?視覚経路と半側空間無視
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背側視覚経路と腹側視覚経路、半側空間無視の関係とは?

私達は日々色んなものを「見て」生きていますが、よくよく考えてみると、目に入ってくる情報というのは多彩です。

例えば飛んでくるボールの事を考えても、

それがどんな形をしているのか、どんな色をしているのか、どんなふうに動いているのかというのは物理学的には異なる情報なのですが、

私達の脳は「ボールが飛んでくる!」というように一つの統合された視覚的意識として認識しています。

このように異なる情報を束ねる視覚認識システムというのはどのような仕組みになっているのでしょうか。

視覚認識のことを調べると必ず当たるものに、背側視覚経路と腹側視覚経路というものがあります。

(紫色が腹側視覚経路、緑色が背側視覚経路)

視覚野から側頭葉へ抜ける腹側視覚経路というのは、その物体が何なのか(バスケットボール、ソフトボール、石、UFO etc..)という意味情報を処理する働きがあるのに対し、

視覚野から頭頂葉へ抜ける背側視覚経路というのは、その物体がどこにあってどこに動いているのか(高い軌道を描いて自分の手前へ向かってくる etc…)という空間情報を処理し、ひいては対象との運動を行う上で調整を図る役割があります(ボールに向かって手をのばす、目の前のコップに手を伸ばす、コップを掴むなど)。

今日取り上げる論文は、半側空間無視患者を対象に純粋な視覚的認知課題と運動知覚課題(ある対象を左右いずれかの視空間に提示し、その対象を掴むためにはどれくらい手を開けばいいか認知させる)を行ったものです。

ある患者においては視覚的認知課題が十分にできないにもかかわらず、運動知覚課題に問題がないケースがあり、

腹側視覚経路が損傷されていても背側視覚経路が損傷されていなければ運動的知覚は保たれることもあるのではないかということが述べられています。

視覚的認識というのは一枚岩ではないのだなと思いました。

参考URL :Visual size processing in spatial neglect

ポイント

半側空間無視は多くの場合左側に生じ、その原因として知覚的な歪みが関わることが考えられている。

本研究では単純知覚課題と運動知覚課題を半側空間無視患者に行わせ、その違いについて調査した。

結果、1名の患者で明確な単純知覚と運動知覚の分離が見られ、半側空間無視では運動知覚に関わる背側視覚経路が損傷しない場合、運動知覚が保たれる可能性があることが示された。

 

補足コメント

昔からボールで遊ぶのが苦手でドッジボールなんかにはトラウマに近い感情がある。

おそらく腹側視覚経路がきちんと働いていないのかなと思ったりもする。

ある種の人間は微細なハンディキャップがあったりして、結構生きるコストが高かったりする。

意識的にしろ、無意識的にしろ日常に訓練的な要素が色濃く入り込む。

かといってひたすら苦手なものを潰していくのが人生かというとそれも違うような気がする。

好きなこと、得意なこと、褒められることというのはいくら苦労しても苦しいという感覚もないし、いくらやっても頑張っているという感覚もない。

嫌いなこと、苦手なこと、叱られることというのは、毎日苦労して努力するわりには報われる感覚も少ない。

おそらく職業、もしくは所属するコミュニティを選択する自由度が低かった前近代においては「苦手なことを努力して克服する」というのが最も妥当なコストで生存確率を引き上げる方略だったんだろうと思う。

食費や居住費といった生きるコストが引き下がり、生き方の自由度が良くも悪くも高くなった今では「好きなことをどんどんやる」というのが妥当な方法なのかもしれない。

個体を環境に合わせるか、環境を個体に合わせるか、

二つに一つではないにしろ、ある程度腰は軽いほうがよいのかなと思ったりです。

 

 

 

 

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