
思春期の男児及び女児におけるジェンダーイデオロギー、同性の友達グループへの所属およびテストストロンと支配性の関係
人間関係というのはシビアであり、
ゴリラやチンパンジーといった霊長類の末裔である私達はいやおうなく本能的に上下関係を作り出します。
こういった上下関係を作り出すことに関係するホルモンとしてテストストロンというものがあり、
様々な研究からこのホルモンの濃度が高いほど、地位や権力を追い求めるようになり、結果的にグループ内での地位が高くなることが示されています。
今日取り上げる論文は思春期の少年少女を対象にテストストロンの濃度とグループ内での地位の高さの関係について調べ、
さらにこの関係性を修飾する要素としてどのようなものがあるか調べたものです。
対象となったのは13歳から14歳の少年少女599人(男子301人、女子298人)であり、
彼らを対象に血漿内のテストストロンの濃度を測定し、加えてグループ内での地位や同性との関係性(同性の友達のほうが多い/少ないなど)、性的イデオロギーの傾向(男は強くなければならない、女は家庭的であるほうがよいなど)を調べ、これらの項目の関係性について調べています。
結果を述べると、女子においてはテストストロンの値が高いほどグループ内での地位は高かったものの、男子においては統計上有意となるほどの関係性はテストストロンとグループ内での地位の間に見られなかったこと、
また女子においては同性間の関係性が高いほど(同性の友達が多い)、テストストロンが地位の高さに与える影響は抑えられ、
男子のおいては性的イデオロギーが強いほど(男は強くあるべしなど)、テストストロンが地位の高さに与える影響は抑えられることが示されています。
女性というのは女性ホルモンオキシトシンの影響なのか平等を好む性質があり、
女子においては同性との友達との関係性が強いほど、テストストロンが高かろうと高い地位から少し退くということもあるのかなと思いました。
ポイント
・テストストロンは社会的な地位に関連することが知られている。
・思春期の男女を対象にテストストロンの濃度とグループ内での地位の高さ、同性間との関係、性的イデオロギー(自分が男らしくあること、もしくは女らしくあることへの態度)との関係について調査した。
・結果、女性ではテストストロンの濃度が高いほどグループ内での地位が高い傾向が見られた。女性では同性間との関係が高いほどテストストロンが地位の高さに与える影響は抑えられ、男性では男らしくあることへの好みが強いほどテストストロンが地位の高さに与える影響は抑えられた。
コメント
妻は私と正反対の性格で、タフで社交的でキャラ的には相当男らしい。
女性らしい駆け引きやつるみが苦手で中学高校は男友達のほうが多かったという話を聞く。
おそらくスクールカーストも上の方だったのかもしれない。
地位とはなんだろう、権力とはなんだろうともやもやと考えることもある。
平等を求めずにはいられない本能と、社会的ポジションを上げることを求めずにはいられない本能というのは論理的には両立できず
この矛盾を解決するために世界のあちこちで「大いなる神の下の平等」という概念が出来たのかなと思ったりもする。
とはいえ平等を謳う宗教団体でも序列はできるし、平等を謳う社会主義国家や職能団体でも権力の序列はできる。
人の歴史というのは権力欲求を横糸、平等欲求を縦糸に織り上げられていくのかなと思ったり、
人工知能に権力欲求と平等欲求を同時に組み込んで進化計算とかさせたら、どんな振る舞いを見せるのだろうと妄想したりです。