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運動学習と脳システム

運動学習というのは、スポーツにしろリハビリテーションにしても避けることのできないテーマだと思うのですが、これは果たしてどのようなメカニズムで成り立っているのでしょうか。

今回の記事では運動学習についての代表的な研究を14本取り上げ、わかりやすい形で解説したいと思います。

運動学習の神経メカニズム

私達の脳はどのように発達するのか?脳の発達の3種類

ヒトというのは他の動物と違って成熟するのにとても時間がかかる生物です。

歩くことだけ考えても1年以上を必要としますし、これが話をしたりコミュニケーションを取ったり、人格を陶冶するという話になるとそれこそ数年から数十年の機関を必要とします。

こういった学習の間、私達の脳は様々に形態を変えながら私達をバージョンアップさせていくのですが、神経生理学的にはこのような発達は具体的にどのような変化として示されるのでしょうか。

この論文は、脳の発達について論じた総説論文になります。

Functional brain development in humans

この論文によると脳の機能的な発達というのは大きくは3種類に分けられるようです。

一つは添付図aのように脳のある領域そのものが時間とともに成熟して、何らかの機能が現れるようなもの、

もう一つは添付図bのように脳の領域同士のネットワークが出来上がることで、何らかの機能が現れるようなもの、

さらにもう一つは運動学習に見られるように学習初期と後期で主役になる領域が入れ替わるようなものがあり

機能発達における私達の脳の変化はこれら3種類のいずれかにあたるではないかということが述べられています。

私達の脳は経験によって形作られていきますが、こういった経験は脳内の様々なつながりや関係性を変化させて、私達の有り様を変えていくのかなと思いました。

「恣意的で空間的に固定された手がかり刺激によって引き起こされた視覚運動的行為の脳活動:ヒトを対象にした機能的MRIを使用した研究」

普段あたりまえだと思っていることは当たり前すぎて考えることもありませんが、よくよく考えると私達ニンゲンがコミュニケーションを取れるというのは実に不思議なことだと思います。

朝起きてから夜寝るまで思ったり考えたりすることは膨大で、そのあれこれを口に出して言葉で示してみたり、こんなふうに文章で書き表してみたり、あるいは踊ったり、歌ったり、絵を書いたり、あるいは抱きしめたりして自己表現というものを行っているのですが、なぜ私達はこんなふうに自己を表現できるのでしょうか。

なんだか話が大それていますが、そもそも「表現」とはなんでしょう。

話す、書く、踊る、歌う、描く、抱きしめる、この各々に共通しているのは「運動」しているということです。

運動というとどうにも色気がないのですが、いろんな表現というのは基本的に身体運動の形をとって現れます。

「敬意」というものを表現するには土下座をしたり足元につばを吐いたりと世界にはいろんな身体運動でそのイメージ(敬意)を表現する文化があります。

「リンゴ」というものを表現するには口周り喉まわりの筋肉の運動を行って特定の鳴き声でその意味を示します。

それは「りんご」であったり「アップル」であったりあるいは「アプフェル」かもしれないけれど、いろんな運動でいろんな鳴き声を出して意味を伝えるというのは「敬意」の表現と一緒です。

こういった例に見るように本質的にはなにかの対象に対して恣意的な身体運動を行うで、ヒトは様々な自分の思いを伝える事ができるようになったと思うのですが、この論文はこれがどういう仕組みになっているか脳活動の面から調べたものです。

Brain activity during visuomotor behavior triggered by arbitrary and spatially constrained cues: an fMRI study in humans.

ごくごく端的に述べるとヒトの情報処理というのはカタチと意味の二本立てになっているそうです。

これは例えばリンゴというものが目の前にあればりんごの色やカタチ、大きさと処理する「カタチ認識システム」とリンゴの重さ、旨さ、思い出などを処理する「意味認識システム」が同時並行的に脳の中を走っていきます。

          カタチ認識システム→前頭前野A

リンゴ →

      意味認識システム→ 前頭前野B

というふうにリンゴの情報が流れていくのですが、カタチ認識システムで処理された情報は最終的に前頭前野Aで対応するアクション(リンゴという鳴き声、アップルという鳴き声、アプフェルという鳴き声に対応する口腔咽頭運動)に変換されます。

一つの対象にさまざまなアクションが候補として前頭前野Aであげられるのだけれども、意味処理システムの末端の前頭前野Bが文脈に応じてもっとも意味的に適切なものを1つ選ぶ

      カタチ認識システム→前頭前野A(運動語彙)

リンゴ →              ↑

      意味認識システム→ 前頭前野B(意味)

というような仕組みで意味に合致するアクションを当てはめるのではないかということが述べられています。

「ヒトの感覚運動学習:適応、スキル、さらにそれを超えて」

運動学習、運動学習というのは学校でもリハビリの現場でも毎日毎日言われるようなものだと思うのですが、果たして運動学習というのは何をさして運動学習というのでしょうか。

たとえば車の運転を考えてみましょう。

教習所に通ってアクセルの踏み方からブレーキのかけ方、ハンドルの切り方、加速の仕方、いろんなことを学んで車を運転できるようになります。

これはひとつの運動学習と捉えることも出来るでしょう。

また毎日軽自動車に乗っている人が、大型のバンを運転しなければいけない状況を考えてみましょう。

最初はおっかなびっくりでですが10分も転がせば大体スムーズに運転できるようになるでしょう。

これもひとつの運動学習と捉えることが出来るでしょう。

あるいは車のシフトレバーというのは毎日使うものですが、これを毎日使っていると、たまにシフトレバーがハンドルの横に直接ついたものなんかに乗った時に、わかっているけど助手席横の方に手が伸びてしまうということもあるかもしれません。

この手に癖がついてしまうというのもある種の運動学習と捉えることが出来るでしょう。

以上あげたように運動学習というのは様々に分けることができそうです。

この論文では車の運転を新たに覚えるような学習をスキル学習、違う車種に馴染むような学習を適応、いつもおんなじ車に載っているため自然とクセが付くような学習を使用依存性可塑性というふうに分けて考えられること、

またそれぞれは互いにつながりを持っており、また対応する脳領域があることが述べられています。

模式的に書くと以下の図にようになるようです。

 感覚運動学習

↓       ↓      ↓
適応⇆使用依存性可塑性⇆スキル学習
↓      ↓     ↓   ↓    ↓
↓      ↓    課題方略 最適化 変動性減少
↓      ↓     ↓     ↓   ↓
小脳    運動野   前頭前野 基底核  運動野

「訓練によって白質の構造変化が引き起こされる」

脳というのは大きさにして握りこぶし大2つ分位のものらしいのですが、これは大きくは二つの部分に分けることができるそうです。

ひとつは灰白質と呼ばれるピンク色の部分、もう一つは白質と呼ばれる内側に見える白色がかった部分です。

このピンク色の部分は脳の神経細胞の本体部分で、白色の部分は神経細胞をつなぐ電線に当たるような部分(連絡繊維)になります。

脳というのは訓練や学習で変化すると言われていますが、ではこの変化はピンク色の本体部分でおこるのでしょうか、それとも白色の電線部分でおこるのでしょうか。

この論文はある特殊な可視化技術によって白質(電線部分)の変化について調べたものです。

Training induces changes in white-matter architecture.

実験では被験者に数週間ジャグリング(複数のものを同時に空中に投げて取ったり受けたりする技術)の練習を行わせ、その前後で白質部分の変化を追ったそうです。

その結果数週間の練習で視覚と運動をつなぐ脳の部分の白質が変化したことが示されています。

組織のパフォーマンスを上げるには個々のプレイヤーの技量を上げる方法とプレイヤー同士の連絡を密にする方法があると思うのですが、脳というのはその両方の方略をとっているのかなあと思いました。

「情動的な学習によって初期視覚野の活動と機能的連結性が強化される」

脳というのはネットワークに例えられるようです。

例えばこの図を見てください。

これはあるネットワークの模式図なのですが

これは見様によっては人間関係のネットワークにも見えるし

あるいは国内線と国際線から構成される5大陸を結ぶ航空ネットワークのようにも見える

あるいはインターネット上の人気のあるサイトの関連図のようにも見えるのではないかと思います。

脳というのも上記の例に漏れず、ネットワーク的な構成になっているようです。

それでこのネットワークの見方なのですが、二通りの見方があるそうです。

ひとつはつながっているかつながっていないかだけでみるもの、これは解剖学的連結と言って、実際に解剖学的につながっているかを見るものだそうです。

もう一つは機能的連結と言って、どういうふうにつながって活動しているかを見るものだそうです。

たとえばさっきのネットワーク図を学校のクラスの人間関係としてみてみると

隣のクラスと抗争がある時なんかは喧嘩が好きな子を中心とするつながりががササササーッと強くなって、あたまの冷めた人たちとのつながりは薄くなるかもしれない。

あるいは何事も無く平和なときには、それなりにみんなゆるくつながり合っているかもしれない。

テスト前になればあたまの良い子を中心とするつながりがつよくなるかもしれない。

ネットワークというのはこんなふうに結構ダイナミックで、状況に応じてつながりの度合いも変わってくる、そんなもののようです。

脳でも何かを見ている時の脳のつながり方と、何かを一生懸命考えている時、何かを真似している時では、脳という同じネットワークを使っているにしてもそれぞれつながり方が違ってくるのではないかと思います。

こういった状況に応じたつながり方を機能的連結というそうです。

今回取り上げるのは情動刺激を提示した時の視覚野の働きをこの機能的連結がどうなっているのかという視点で調べたものです。

Affective learning enhances activity and functional connectivity in early visual cortex.

結果を述べると

①情動的な刺激を見せると視覚野内(V1,V2,V3、V4)の結合性が高まる
②また情動的な刺激を見せると視覚野と他の領域(上側頭葉、頭頂間溝、補足運動野など)の結合性は低下する
③中立的な刺激を見せると視覚野と他の領域との結合は適度な状態となる。

ということだそうです。

国内線と国際線の喩えがわかりやすいと思うのですが、視覚野内の結合性が高まるというのは国内線ネットワークが増便されるということで、視覚野外の領域との結合性が低下するというのは、国際線の欠航が増えるようなものとイメージしてもらえればと思います。

脅威刺激に適応するために、つながりの再構成が行われるのではないかということが述べられています。

「リーチ動作のエラーと神経活動の相関」

以下の論文はリーチ動作についての論文になります。

Neural correlates of reach errors.

この論文でリーチ動作のエラーが3つに分けられることを知りました。

これを日常生活に置き換えれば、期待していたのにあてが外れることが「標的エラー」、欲に目が眩んで失敗するのが「動力学的エラー」、どっかから横槍が入って失敗することが「運動学的エラー」ということになるのでしょうか。

こう見てみると、生きることはエラーまみれ、エラー三重奏、容易ではないなあなどと思ったりです。

この論文ではこの三種のエラーのうち、動力学的エラーと運動学的エラーは主に中心溝と後中心溝、小脳といった可塑性に富む領域と関係していること、標的エラーは線状体と後部頭頂葉と関係していることが示されています。

運動と感覚の統合

「感覚運動統合および感覚運動学習に関わる左前頭頭頂間の二種類の感覚様式(聴覚と視覚)の神経回路」

聞いた話によれば、世の中には視覚優位な人、聴覚優位な人、触覚優位な人がいるそうです。

触覚優位な人は、暗がりの中を手探りで歩くように、物事に対して手堅い判断をする傾向があり、視覚優位な人は遠くを見通した、傍から見ると冒険的ともいえる判断を下す傾向があるそうです。

それが本当かどうかはさておき、この論文は感覚刺激から運動を行わせる時に何が起こっているのかを調べたものです。

与えられる刺激が聴覚視覚であるを問わず、背側運動前野と後部頭頂葉が強く活動していること、かつ左半球が強く活動している傾向があること、背側運動前野でも吻側部が認知に、尾側部が運動に関わっていることが示されています。

Bimodal (auditory and visual) left frontoparietal circuitry for sensorimotor integration and sensorimotor learning.

なぜあなたの歌声はぶれてしまうのか?

歌を上手に歌うというのは中々大変で,

歌の苦手な人は合唱に入ってもデュエットで歌っても,他のパートに引きずられて音程がずれたりしてしまいますが,

歌の上手な人,とりわけプロの歌手というのは,どんな環境であっても,いつも同じように歌うことができます.

こういった歌の能力は脳科学的にどのように説明できるのでしょうか.

この論文は,喉に麻酔をかけられた状態で歌唱能力がどのように変わるかについて,歌唱訓練を受けたことがある人と,受けたことがない人で比べたものです.

Experience-dependent modulation of feedback integration during singing: role of the right anterior insula.

実験では17名の歌唱訓練者(平均6.7年)と12名の非訓練者を対象に,単純な音程を聞かせ,それをリピートして歌わせているのですが,

結果を述べると

・歌唱訓練者は喉に麻酔をかけられていても比較的上手に再現できていた(音程のズレが少なかった)

・歌唱訓練者と非訓練者の脳活動の違いは,右前部島皮質(right anterior insula)に見られた

ということが述べられています.

歌を歌うにしろ,ボールを投げるにしろ,私達が自分の体をコントロールするチャンネルは2つあります.

一つはフィードバック制御であり,

これは実際に歌ったり,ボールを投げたりした時に,喉や腕の筋肉が実際にどのように動いたか,自分が思ったように動いたかどうかで判断して運動を調整するような制御方法で,

これは初めてスキーやサーフィン,スケートボードをしたことを思い出してもらえればと思いせば,イメージしやすいと思います.

もう一つはフィードフォワード制御で,

これは何度も練習しているので,このパートを歌うときにはこんなふうに口を開いて喉を震わす,とトップタウン的に動かすようなコントロールの仕方です.

この論文によると,歌唱訓練者は,喉に麻酔をかけられて,喉の筋肉がどう動いたかというフィードバック情報が使えない状態でも

どう喉を動かせばよいかというフィードフォワード制御を使って,うまく歌っていたのではないかということが述べられています.

やはり歌を歌うというのは運動スキルなのかなと思いました.

「相対的な相の視覚的知覚から情報を同定する」

脳卒中になると今まで出来ていたいろんなことができなくなります。

今まで自由自在に動いていた腕が動かなくなったり、脚を引きずるようにしか歩けなくなったり、さらには言葉や行為、記憶、いろんなところがうまく噛み合わなくなってきます。

こういった現象を見るにあたって、脳が、この領域がというのは大事だと思うのですが、全てが脳のせいかというと必ずしもそうではない。

脳卒中で寝たきりになっているうちに足首が固くなって足を引きずるようにしか歩けないということもあるでしょうし、その状態でしか歩けないことが脳の回復を妨げるということもあるでしょう。あるいは人混みの中だと怖くてうまく歩けないけれども、何もないリハビリ室だと上手に歩けるということもあるかもしれない。

つまり脳だけでもない、身体だけでもない、環境だけでもない、こういったいろんな要素の相互関係の中から、うまく歩けない、うまく話せない、うまく判断できないといったいろんな障害が立ち上がってくる、そういったことがあるのではないかと思います。

これを会社組織で考えれば、経営者を替えれば必ずしも経営が良くなるというわけでもなく、スタッフを入れ替えれば必ずしも良くなるわけでもなく、仕組みだけを変えても必ずしもうまくいくとは限らない、経営者とスタッフ、仕組みの三者の相互関係の中からパフォーマンスが決定されてくる、そういった意味ではヒトと会社というのは似ているのかもしれません。

この論文は知覚と運動の関係性について調べたものです。

Identifying the information for the visual perception of relative phase.

バッティングがうまい人はおそらく動体視力もよく、音楽の演奏が上手な人はおそらく耳もよく、料理が上手な人の舌はおそらく敏感でしょう。

つまり運動と感覚というのは相互関係をもって連動していると思うのですが、今日の論文はリズム運動を対象にこれを詳しく調べたものです。リズム運動というのはドラムをズンチャカズンチャカやるような、あのリズム運動です。

このリズム運動には視覚的な知覚能力が関係するということが言われていたのですが、この論文はそこをもう少し深堀りして、リズムの速度知覚、頻度知覚、方向性知覚のどれが決定的かについて調べたものです。

結果として方向性知覚が一番重要ではないかということが述べられています。

ミラーニューロンと運動学習

ミラーニューロンと運動能力、社会性の関係とは?

子供というのはマネの天才です。

親のやることなすことなんでも真似したがるのですが、この真似の能力というのは仲良し具合に影響されるものなのでしょうか。

この論文は仲良し具合と運動学習の関係性について脳科学的に調べたものです。

Favouritism in the motor system: social interaction modulates action simulation.

仲良し具合というと言葉が乱暴なのですが、実験では社会的な関係性がある人とない人で動作の予測に関わる脳活動が違うかどうかを比べています。

結論を述べると社会的な関係性がある人の動作を予測するときのほうが運動に関わる脳の部分が強く活動することが示されており、やはり人間関係の濃い薄いが運動の模倣に影響するのではないかということが述べられています。

「模倣、ミラーニューロン、道具の使用の神経学的起源とその関連」

地球上には幾万の種類の動物がいますが、踊りを踊れるのはヒトだけではないかと思います。

走ったり、泳いだり、いろんな運動が得意な動物は山ほどいますが、踊りを踊れるのはヒト一種のみ。なぜこのようなことがおこるのでしょうか。

そもそも踊りを踊れるためには何が必要でしょうか。

踊りを覚えるところから考えてみましょう。

「はい、ここで右手を大きく上げて」

「ここで左足を小さく前へ出して」

などなど、踊りを覚えるときには、身体の一つ一つを自覚しなければなりません。

普段普通に動いている分には自覚しなかった自分のからだというものを、これは手、これは足というふうに道具でも見るように客観的に自分の体を意識する必要がある。

「ここで足上げる」「ここで手を下ろす」というふうに、自分の体をあたかもモノでもみるように、クールに客観視する必要がある。

このクールな客観視ができるから、ヒトは小器用に自分の体を操ることができるのではないかと思います。

自分のからだをクールに客観視できる。

ウサギは「なんか最近右足の付け根のあたりが重だるいだよね、跳ねまわり過ぎかな」とはおそらく思わないのもクールな自己客観視ができないからでしょうし、

生後数ヶ月の赤ちゃんが「寝がえりしようとするんだけどさ、なんか、このへんのタイミングでうまく左手が伸びてこないんだよね、腰がついてこないっていうか」などと思わないのも、これも自分をクールに客観視できないからでしょう。

自分の体を小器用に、自分が思うとおりに動かすためには、このように自分の体をクールに客観視できる能力が必要なのではないかと思います。

今は一例として踊りの学習を考えましたが、踊りにかぎらず、言葉の使用や道具の使用などなど、ヒトのヒトらしい行動の多くはモノマネによってなりたっています。

かつこのモノマネ能力の基盤になっているのが、クールな自己客観視能力です。

これができるからクールに小器用に自分の体を動かしてモノマネをすることができる。

前振りが長くなりましたが、この論文は、道具の使用と自己客観視の関係について考察を行ったものです。

The neural origins and implications of imitation, mirror neurons and tool use.

サルというのは一般的には道具らしい道具を使用しないと言われていますが、実験室で道具の使用をトレーニングされたサルというのは随分かしこくなるそうです。

具体的にはモノマネが上手になったり、その辺の野生のサルより言葉っぽい音声をだすようになったりいろんな変化があるそうです。

なぜこういうことが起こるかというと、道具を使うためには、いやおうなく自分の体を意識する必要があり(自転車をはじめて乗った時のことや、重い斧を振り上げるときを想像してみてください)、

このことで自己客観視に関わるネットワークと動作のコピーに関わるミラーニューロンネットワークの間に新たな神経連絡ができたためではないかということが述べられています。

「動作観察ネットワークにおける身体学習と観察学習の感受性」

東京は銀座にあるその伝統のあるビアホールには伝説の名人と言われるような人がいて、それはそれは美味しいビールを出してくれるそうです。

その技術を学ぼうとある若者が就職したのですが、名人は一切サーバーには触れさせず、ひたすら3年間自分が注ぐ様子だけを見せたというようなウソのような本当のような話を聞いたことがあります。

このビアホールの話にかぎらず、この国の文化的な傾向として見て学ばせる要素が強いような気がするのですが、果たして私達の脳は見るだけで動きを覚えることができるのでしょうか?

この論文は観察学習と運動を介した学習で脳活動に違いが出るかについて調べたものです。

Sensitivity of the action observation network to physical and observational learning.

脳の中にはある動作を見ている時も、またその動作を行っている時も同じように活動するネットワークがあることが知られています。

これはミラーニューロンシステムとも動作観察ネットワークとも呼ばれるものですが、この実験では被験者にダンスを観察学習させた場合と、実際にダンスを踊らせて学習させた場合で、その後そのダンスを見た時の脳活動で違いが出るか確かめたそうです。

結論を述べると観察学習の場合も実際の運動を通して学習した場合も同じような場所がダンスを見ることで賦活されており、運動学習というのは観察だけでも起こりうるのではないかということが述べられています。

観察学習の脳科学

日本語に「見習い」ということばがあります.

これはまだ現場に出るには力不足で,文字通り「見て覚える」ポジションを指しますが,なぜヒトは見ることでいろんなことを学習することができるのでしょうか.

この論文はこの観察学習についてダンスを素材にして詳しく調べたものです.

Sensitivity of the Action Observation Network to Physical and Observational Learning

実験ではダンスを見て覚えるように指示された群と,実際に体を動かして覚えるように支持された群に分けて,5日間の練習の前後比較しているのですが

見て覚えようとするだけでも,実際に体を動かして覚え用とした人たちと同じような脳活動の変化があったことが示されています.

これは運動の準備に関わる運動前野の一部と,いろんな感覚情報が統合される頭頂葉の一部だったそうですが

著者らによると,観察学習だけでもある程度運動学習が成立し,その後実際にカラダを動かすことで,より精巧に作り込まれるのではないかということが述べられています.

昔の格言でも「やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、 ほめてやらねば人は動かじ。」

というものがありますが,何かを学習するときには見習い制度でもないですが,見せるところから入るというのは脳科学的にも妥当なのかなあと思いました.

「マカクザルの腹側運動前野は上肢の運動神経細胞の出力を大きく増大させる」

脳の中には運動に関わる領域が数多くあるのですが、この中でも腹側運動前野というところは運動の「行為」そのものに関わる領域だそうです。

例えば蛍光灯の紐を引っ張るという行為があるとしても、立ち位置によって真上に手を伸ばす時もあれば斜め上に手を伸ばすときもある。

こういった時には活動する筋肉も違ったものになるし、活動の筋肉のタイミングも違ったものになるはずなのですが、腹側運動前野は「紐を引っ張る」という動作に関連して、いつどんなポジションで紐をひこうとやっぱり発火する。

これに対して一次運動野は運動そのものをコードする。なので紐を引っ張るときの立ち位置や引っ張り方に応じて異なる活動をする。

この論文はこの腹側運動前野と一次運動野の関係性について調べたものです。

Macaque ventral premotor cortex exerts powerful facilitation of motor cortex outputs to upper limb motoneurons.

結論を述べると、運動神経細胞がしっかりと発火するためにはこの両者が手を組まなければならないということが書かれています。

実験ではサルの腹側運動前野と一次運動野に電極を挿入して電気刺激を加えた時の運動神経細胞の活動を見ているのですが、

一次運動野だけの刺激ではぱっとせず、腹側運動前野だけへの刺激だけではほとんど活動が見られず、この両者を関連付けて学習させた後に腹側運動野を刺激すると、運動神経細胞の発火が活発になるということが示されています。

つまり「行為」と結びついた運動というのは、きちんと筋が働いてくれるということなのかなあと思いました。

まとめ

以上、今回は運動学習に関わる研究を基本メカニズム、運動と感覚の統合、ミラーニューロンを軸に取り上げました。

実際はここまで単純ではなく、更に精緻なメカニズムが提唱されていますが、それについては次回また取り上げたいと思います。

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