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半側空間無視とイメージの障害

半側空間無視では損傷した脳領域とは反対側の空間(多くの場合は左側)をうまく認知できなくなってしまうような症状が生じるのですが、

このような障害は今見ているだけの景色だけでなく、想像上の景色においても左側をうまく思い出せなくなることが知られています。

しかしながらなぜ記憶の中に残っているはずの景色までが半分見落とされてしまうのでしょうか。

今日取り上げる論文は、臨床上の評価では半側空間無視がないものの、よく知っているはずの景色を描写させると不思議に半側空間無視のように左半分の景色を描写できなくなってしまう症例について紹介したものです。

この患者は56歳で発症から16ヶ月経過した左片麻痺症状を呈しているのですが、

臨床上の半側空間無視評価ではほとんど正常であるにもかかわらず、患者が長年働いていた街の広場を描写させると、どの視点から思い出させても左側の空間を描写できなくなってしまうこと、

しかしながらその広場に見えるはずのものをチェックさせる形式の検査をすると正確に視野に入るはずのものがチェックできていることが示されています。

またこの症例は、多くの半側空間無視患者に見られるような頭頂葉周辺領域の損傷ではなく、右前頭前野に限局した損傷があることも示されています。

このような現象が起こる原因として、通常私達が記憶の中の景色を思い出すときには

1.骨組みとなる空間的な枠組みを頭の中で作り

2.その枠組みに自己中心座標で構成された長期記憶に保存された空間情報を転写し

3.注意機能を用いてそのイメージに当てはまる対象物を選択し

4.選択された対象物をその空間上に貼り付ける

という作業をしており、(なんだかパソコンで画像をプロットするプログラムと似ていると思いました)

この過程がうまく成り立たないことで、想像上の景色においても半側空間無視のような症状が出るのではないか、またこの過程に右前頭前野が関わっているのではないかということが述べられています。

難しいなと思いました。

参考URL:Unilateral neglect restricted to visual imagery.

【要旨】

脳損傷とは反対側の視空間における知覚の障害や探索の障害は今まで頻繁に記述されてきた。身体外空間に対する半側空間無視を有する多くの患者に街の広場を思い出すことに対しても困難を生じていた。認知的研究と神経生理学的研究から知覚とイメージにおける機能的な並行性が示されており、知覚領域と想像領域は共通の神経基盤を有することが考えられている。本稿では身体近接空間および遠隔空間における無視症状を有さないにもかかわらず、よく知っている広場を思い出すときに想像上の景色において無視症状を示す症例を紹介する。先行研究で示された想像障害とは異なり、CT画像上からは右前頭葉に限局した損傷が認められ、この領域がいくつか特定の心理的想像に関わっていることが考えられた。

コメント

多重人格というものに興味があって、最近このような本を読んでみた。

いろいろ興味深い話が書かれているが、解離症状をきたす人は視点が身体外にずれていることが多いという話があった。

通常わたしたちは自分は自分だと感じている。

これを成り立たせているものの一つとして一人称的な視野というものがある。これは自分の目から世界を見ているという感覚なのだけど、解離症状を示すような人は自分の後ろから世界を見ているような感覚があるらしい。

私は幸い解離症状がないが、ときに自分の視点はぼやけているんだろうなと感じることがある。上手く言えないのだけど、視点がこの両目から見ているというよりは身体近傍にぼやっと拡散して身体表面から世界を感じているような感じだ。

筋トレの後猫背を正して肩甲骨を良いポジションにおいて意識的に意識の中心を眼球の奥に置くと、ふわっといわゆる一人称的な視野がクリアに広がり、あれっと思うことがある。

身体感覚と視覚的意識はどこかでつながっていると思うのですが、どうなんだろう。

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