【脳科学専門ネット図書館】会員募集〜ワンコインで世界中の脳科学文献を日本語要約〜

はじめに

物余りの世の中とは言われていますが、ものが余っても金が余っているという話はあまり聞きません。

私達はモノ以外にも多くのお金を使います。

それは水商売にお金を使ったり、誰かとご飯を食べるためにお金を使ったり、あるいは誰かとつながるためにお金を使います。

こういったお金の使い方は寂しさを埋めるための消費行動のような気がするのですがどうなんでしょうか。

またこういった孤独感というのは遺伝的に決まっているものなのでしょうか。

この記事では寂しさが脳と心にどのような栄養を及ぼすのかについての代表的な論文を17本取り上げツッコミを入れつつ説明します。

寂しさと報酬系

孤独と不安と性行動

googleでsexlessで検索すると不思議に”sexless japan"が上位自動検索されてくるのは不思議ですが,こういった検索結果が出てくる背景には国民的な気質でもあるのでしょうか.

この論文は孤独や不安感が性行動に与える影響についてラットを対象にして分子生物学的に調べたものです.

Regulation of anxiety and initiation of sexual behavior by CREB in the nucleus accumbens

一般に「やる気」に関わる脳領域として側坐核というところがあるのですが

ラットを孤独で不安な環境に置くことで

性行動に消極的になり,射精までの時間が長くなり,「やる気」に関わる側坐核の活動を調整するタンパク質の生成が変化することが示されています.

もともと不安がちになりやすい国民気質というところに,

現代社会特有の家庭や社会の中での孤独感というのもなにかしら検索結果に反映されているのかなと思ったりしました.

性欲とかけて愛と解く,そのこころは?

それは愛か性欲かというのは非常にややこしい問題だと思うのですが脳科学的にはどのようにとられることができるのでしょうか.

この論文は愛と性欲の違いについてなされた膨大な脳科学研究をもとにその相違点について探ったものです.

The common neural bases between sexual desire and love: a multilevel kernel density fMRI analysis.

結論を述べると

①愛と性欲に関わる脳領域は大分かぶっている.

②具体的には様々な身体感覚を統合する部分や報酬,嗜癖に関わる領域が共通している

③どちらも島皮質と呼ばれる脳内情報の統合に関わる部分が働いているが,愛は前部の島皮質,性欲は後部の島皮質が活動する傾向がある

④前部の島皮質のほうが高次の情報統合がなされることから,愛は性欲を基盤としたより高次の感情である可能性がある

ということが述べられています.

つまり愛は性欲(心地よい体性感覚)の延長線上にあり

報酬や依存,嗜癖と性質も自ずと含んでいるということで

愛の字が関わる色んな場面で揉め事,トラブルが起こるのもやむを得ないのかなと思いました.

なぜあなたの脳は和を乱すことができないのか

日本人はよくも悪くも協調性が高いと思うのですが,これは度を過ぎればしばしばギスギスすることがあります.

皆が残業しているので仕事が終わっても帰りづらいとか

みんなが取ってないから有給を取りづらいだとか

有形無形の空気のように逆らうのには少々チカラがいるとおもうのですが

なぜあなたの脳は和を乱すことを避けたがるのでしょうか.

様々な心理学的な研究から人の社会性というのは二種の力によってなりたっていることが考えられています.

一つはお互いに助け合う力です.これはたしかに美しい.

ただもう一つ大事なのはルールを守らない他者を攻撃する力です.これはややこしい.

ある心理学の実験では,みなで何かを協力して行う課題を行っている時に,助け合うルールでやると協調性は生まれないのだけれども,そこに一生懸命やらない人には各々互いに罰を加え合うというルールを加えると,とたんに皆のまとまりがよくなることが報告されています.

この論文は,ルールを破った相手を罰しようとする時脳の中で何が起こっているかについて調べたものです.

The Neural Basis of Altruistic Punishment

結論を述べると脳の中で報酬に係る部分が活発に活動していることが示されており

このことから人は相手を罰することに喜びを感じるような脳を持っているのではないかということが述べられています.

しばしば人は手間暇カネをかけてまで相手を罰したい衝動を持っており

デフォルトで脳に罰則欲求が仕込まれているのなら,そういうこともやむを得ないのかなと思いました.

絆の脳科学

脳というのはたいそうエネルギーを喰う臓器のようで、その消費カロリーは筋肉の10倍近くと言われています。

その体の大きさだけを考えれば人の脳というのは軽自動車にジェットエンジンを積んだような奇態なものだと思うのですが、なぜヒトはここまでに大きな脳を抱えているのでしょうか。

この論文は脳の進化について検討したものです。

The Social Brain Hypothesis

人を含む霊長類の脳がここまで大きくなったのは上手に獲物を取るだとか、上手に碁を打つということだけでは説明が難しく

他者とうまくやっていくという社会的な要因が人の脳を拡大させたのではないか
また単に社会というのっぺりとした関係ではなく,

「義兄弟」や「ファミリー」ということばに見られるように

人と人が繋がる場合,そのつながり方は極めて濃密で

他の動物では,それと対応するのは夫婦間の絆のようなものしかないのですが,こういった濃密なつながりを社会のあちこちでつくっており

こういった濃密な「絆」を作る性質が脳を加速度的に巨大化させていったのではないかということが述べられています.

時に同僚や患者さんから聞く人間関係のもつれに起因する問題は高等数学よりもよほど難解で不可解であり

こういった環境にさらされることでヒトの脳は巨大化したのかなあと思いました.

ココロの痛みの脳科学

「痛い」というのはずいぶん広く使われる言葉で

それは単に転んで膝を擦りむいて痛いというだけなく

大事な人と別れて胸が痛い、心痛ましい事件、あるいは痛々しさをいうような感じで直接カラダとは関係のない心のストレスに対しても「痛い」という言葉が使われますが、これは脳科学的にはどのように考えられるのでしょうか。

この論文はココロの痛みの神経基盤について解説を行ったものです。

The pain of social disconnection: examining the shared neural underpinnings of physical and social pain.

一般に身体的な痛みというのは4つの要素にわけて考えられるようです。

一つはからだのどこが痛むかという局在的な感覚(足よりも手が痛いなど)、

もう一つはどのように痛いかという質的感覚(チクチク、ズキズキなど)

さらに一つはどれくらい痛いかという強度感覚(すごい痛い、ちょっと痛い)、

さらにもう一つが痛みに付随する不快的情動感覚で

心の痛みというのはこの体の痛みの4つ目の要素である情動感覚というところでかぶっており

それゆえ「イタイ」という感覚が湧いてくるのではないかということが述べられています.

また心の痛みと体の痛みの神経基盤が同一であることから

心のケアにアプローチすることで体の痛みにもある程度波及するのではないかということが述べられています。

評判のいいお医者さんやセラピストというのは時に聞き上手だったりしますが

評判の良さというのは心身両面から働きかけるというところもあるのかなと思いました。

寂しさの責任病巣

脳というのはサッカーと似たところがあって,わりに柔軟にできているようです.

何が柔軟かというと,選手が1人や2人レッドカードで抜けたとしても,チーム全体で見ればそれなりに機能することができるという点で脳とサッカーはよく似ているのではないかと思います.

それゆえ孤独感という心の現象の原因になる脳の場所はここだ!ということも言い切るのは難しいとは思うのですが

この論文は脳の構造と孤独感の関係について調べたものです.

Brain Structure Links Loneliness to Social Perception

この研究では数十人からおよそ百人の被験者を対象に脳構造と孤独感,認知機能などの関係性について調べているのですが

結論を述べると,孤独感が強い人たちというのは,脳の中のコミュニケーション能力の基礎になる部分が小さいのではないかということが述べられています.

ちなみにこのコミュニケーション能力の基礎というのは,他者の目のシグナルを感じるための部分で,側頭葉にある上側頭溝と呼ばれる領域なのですが,

目というのは莫大な情報を含んでおり,人はその目の動きからいろんな情報を察します(目が泳いでいる,真剣だ,飽きてきた,楽しそうなどなど)

孤独感が強い人というのはこの目の動きを感知する脳領域が少ないために,結果として社会的に孤立しがちになり,それゆえ寂しい思いをするのではないかということが述べられています.

自分の周りの人達を思い起こすと,反証例はいくつもあげられるので,この部分一つで説明するのは難しいだろうなとは思いますが,説得力がある仮説だなあと思いました.

孤独は運動でなおせるか

脳というのは単独で動くコンピュータのようなものではなく

生身のカラダや生身の人間がひしめく社会というものと密接に関わっているようです.

その証拠に脳の機能を改善するためには有酸素運動が大事だという研究が多数なされていますし

さらには孤独な社会環境が脳に様々な悪影響をおよぼす事も数多く報告されています.

つまり脳にとって運動=善,孤独=悪のような図式が成り立つかもしれませんが,はたしてこの善悪が闘った場合

つまり孤独な人間が運動を行ったときには果たしてどちらに軍配が上がるのでしょうか.

この論文は運動が孤独による脳機能の変化にどのような影響を与えるかについて調べたものです.

Social isolation delays the positive effects of running on adult neurogenesis.

実験ではラットを家族と過ごさせたり,一匹で隔離したり,運動させたり,運動させなかったりで

ストレスの影響を受けやすい記憶脳(海馬歯状核)の神経細胞がどのように変化するか調べているのですが

残念なことに運動によっても孤独の脳に対する悪影響を抑えられず

場合によっては運動によってかえって悪影響を増すということもあるようです.

孤独というのはなかなかにやっかいだなと思いました.

寂しさと遺伝

なぜあなたは寂しがり屋なのか

寂しさというのはヒトだけでなく猫や犬など群れを作って生きる哺乳類全般に見られる感情のようですが

この寂しさというのはどこまで生まれつき決まっているのでしょうか.

この論文は寂しさの遺伝的要因について双子を対象に詳しく調べたものです.

Longitudinal genetic analysis for loneliness in Dutch twins.

実験ではオランダの双子数千組を時間を追って調べているのですが,男女ともに寂しさは30歳くらいでピークを迎え,その後50歳までゆるやかに低下すること,

また寂しさというのは遺伝的要因で77%説明可能であることが示されています.

寂しさというのは生まれつき決まっている要素が大きいのかなと思いました.

育児と寂しさ

ほっておいても独りで遊んでいる子どももいれば,甘えん坊で親元を離れないような子どももいて,子どもというのはいろいろだなと思うのですが

この寂しがりやの子どもというのは教育や環境で矯正(?)可能なものなのでしょうか.

この論文も双子を対象にして寂しさと遺伝的要素の関係について調べたものです.

Genetic and environmental contributions to loneliness in adults: the Netherlands twin register study.

結論を述べるとやはり遺伝による寂しさの影響は強く,環境の影響はほとんどないという結果になってはいます.

しかしながら,これは必ずしも育児が大事ではないというわけではないそうで

育児の仕方によっては

1.全般的な寂しさに対しては対処できないが,ある限られた状況下で寂しさと付き合う方法を学ぶことができる

2.寂しさも含めて遺伝は必ずしも決定的ではなく,遺伝子のスイッチがオンになるかオフになるかは環境による影響が大きい.なので育児というのは子どもの寂しさに関わる遺伝的素質を促したり抑えたりすることはできるのではないか

というようなことも述べられています.

いずれにしても人間というのはパッケージから出してすぐ使えるような完成品からはほど遠く

癖が強くてメンテナンスに手がかかる数寄者の道具にも似て

それゆえ愛着が強く愛おしいものなのかなと思いました.

寂しさの遺伝学

介護に関わる仕事をしていると自ずといろんな家族を見る機会が多くなるのですが,家族というのは不思議にそれぞれ特有の色があるような気がします.

それは落ち着いた色合いだったり,陽気な色合いだったり,寂しい色合いだったりするのですが

こういった家族の色合いというのはなぜ生まれるのでしょうか.ことに寂しさの色というのはなぜ生まれるのでしょうか.

この論文は寂しさの遺伝的影響について1万人弱の双子や親子,兄弟,双子同士の配偶者などを中心にいろいろとしらべたものです.

Familial Resemblance for Loneliness

調査内容として教育の程度や生育歴などいろいろなものを盛り込んで寂しさとの関係を調べたのですが

やはり寂しさというのは遺伝的影響が強く,寂しさの内約4割が遺伝的要因で説明できることが述べられています.

加えて寂しい女性というのは不思議と寂しい男性と結婚する可能性が高くなるそうで

家族の色合いに寂しさが伴っているとしたら遺伝的要因も結構大きいのかなと思いました.

寂しさの心理学

寂しさと世界観:あなたにとって世界は敵か味方か

ものの見方というのは人によって様々で

ある現象を見てもそれを褒め称える人もいるし,邪推する人もいて者の取り方というのは一様ではないなと思うのですが

果たしてあなたにとって世界はあなたの味方でしょうか,それとも気を抜くことを許されないような敵対する何かでしょうか.

この論文は寂しい人の脳活動について調べたものです.

In the Eye of the Beholder: Individual Differences in Perceived Social Isolation Predict Regional Brain Activation to Social Stimuli

実験ではいろんな写真を見せてその時の脳活動を見るのですが

結論を述べると

①寂しい人は,人と人が関わるような社会的な写真を見てもあんまり喜ばない.具体的には脳の中の報酬系が十分に働いていない(そうでないヒトは報酬系(腹側線条体)の活動が高くなる)

②寂しい人は他人が痛みを感じている写真を見ても,あんまり共感しない.具体的には共感に関わる領域(側頭頭頂接合部)が十分に働かない(そうでないヒトは働いている).

③寂しい人はネガティブな情報に気が向いやすい.具体的には他者が痛みを感じているようなネガティブな写真を見ると視覚野の活動が高くなる.これはネガティブ情報に注意がむきやすいことを示唆する.

こういった結果から,寂しくないヒトは社会を良きものとして捉えているのに対して,寂しい人は危険な場所,同情するに値しない悪しきものとして捉えているのではないかというふうに述べられています.

つまり寂しい人は世界を敵として捉え,そうでない人は味方として捉えるということで

世界観というのは寂しさの感受性にも影響しているのかなと思いました.

友達が多ければそれでよいのか?

世の中にはいろんなヒトがいて

始終多くの人と関わる生活をしているのにもかかわらず寂しくてしょうがないヒトもいれば

そんなに多くの人とも関わらず半ば仙人のような生活をしていても朗らか穏やかに過ごしているヒトもいます.

寂しさというのは極めて主観的なもので

一人ぼっちでいても寂しくないこともあれば

多くの人に囲まれていて寂しくなってしまうこともあり,なかなか客観的な判断がしにくいところがあるのですが,これはいったいどうなっているのでしょうか.

この論文は寂しさの個人差についてヒトとサルを対象にした研究になります.

A Behavioral Taxonomy of Loneliness in Humans and Rhesus Monkeys (Macaca mulatta)

この論文によると寂しさというのは付き合いの広さで決まるわけではなく,自分のニーズに合った付き合いを自分で選べるかどうかで決まる部分が大きいことが述べられています.

具体的に言うと,

①人付き合いが狭く,かつそれは自分でも望んでいない

②人付き合いが広く,かつそれは自分でも望んでいない

③人付き合いが狭いが,それは自分でも望んだもの

④人付き合いが広く,それは自分で望んだもの

の順に寂しさが少なくなることが示されています.

面白いのは②で,人付き合いが広くても,それが自分で望んだものでなければ(水商売の客相手や営業の仕事などを考えれば)

結構高いスコアの「寂しい」がはじき出されるということで

またサルの社会関係を観察していても同様の結果が得られるということで

自分が望む範囲で自分が付き合いたいように付き合うのがやはり良いのかなと思いました.

ココロの痛みの進化論

最近の研究によるとココロが痛い時とカラダが痛い時というのは似たような脳活動が見られるということですが、果たしてなぜココロが痛む必要があるのでしょうか。

ココロが痛むのはやはり大事な人との別れなければいけない時だと思うのですが、なぜこのようなときに痛みの感覚が胸に湧いてくるのでしょうか。

この論文はココロの痛みを引き出す実験を行っているものです。

The pain of social disconnection:  examining the shared neural underpinnings of physical and social pain

この論文によると、別れにともなってココロが痛むのは生存確率を上げるためではないかということが述べられています。

痛みというと嫌な感じがしますが、人間痛みを感じないことには死んでしまいます。痛みがあるからこそ、怪我をした時には安静にするし、危ないところには近づかないよう学習することもできます。

死なないようにということで考えれば

生まれたばかりの赤ちゃん動物が母親と別れることは死に直結します。それゆえ赤ちゃん動物が母親から離れた時は強い痛みに似た感覚が惹起され

泣きわめいたりすることで生存確率を上げる、こういったことが別れの痛みの原型になっているのではないかということが述べられています。

痛みは嫌なものですが,生きていく以上痛みと向き合うことは避けられず,カラダの痛みにしろ,ココロの痛みにしろ,無視するでもなく逃げるでもなく,どう付き合っていくかが大事なのかなと思いました.

相棒の効用と心理学

相棒と組んで事に当たるというのは古今様々なドラマの設定として使われてきたと思うのですが、なぜヒトはことにあたって単独よりも相棒と組んで仕事をすることがあるのでしょうか。

この論文は相棒の効用についておサルさんを使って確かめたものです。

Social buffering in adult male rhesus macaques (Macaca mulatta): Effects of stressful events in single versus pair housing

実験では

①12匹の大人のオスのアカゲザルを対象に行い

②かごの中に一匹でいる時と、相方と組ませた時の両方で不安刺激を与える

③その時の異常行動の頻度についてビデオテープを基に検証

という方法で相棒の効用を確かめているのですが、やはり相棒と一緒にいたほうがストレス反応がだいぶ減ることが示されています。

学生の時の臨床実習なんかでも一人で過ごすよりも他の学校からの生徒もいたほうが大分気持ちが楽だったような覚えがありますが

ヒトは独りよりも二人のときの方が勇気を出してことに当たれるのかなと思いました.

あなたが寂しいのはなぜか?

寂しさというのは哺乳類がもつ本能のようなもので

生きていれば何らかの形でこれと付き合わざるをえないのですが,果たして個人が抱える寂しさというのは何が原因でそうなっていることが多いのでしょうか.

この論文はなぜヒトが寂しさを感じてしまうのか,社会的要因から統計学的に探ったものです.

From Social Structural Factors to Perceptions of Relationship Quality and Loneliness: The Chicago Health, Aging, and Social Relations Study

実験ではシカゴに住む225名の高齢者の男女を対象に,その人達が抱える孤独感や社会的背景(学歴,婚姻歴,ストレスなど)の関係を調査したのですが

結果を述べると

孤独感に影響をおよぼすものは数多くあるのですが,その中でももっとも影響を与えるものが,職場の人間関係と夫(妻)との人間関係ということで

この2つが良好でないと孤独感もまた強くなるということが示されています.

また夫(妻)との関係は,互いに愛し合う関係であれば孤独感を押し下げ,憎みあう関係であれば孤独感を増してしまうというのはたしかにわかりやすいのですが

意外なところで憎みあうよりさらに孤独感を強めてしまう関係性というものがあるそうで

相手に対して愛憎交じり合ったアンビバレントな感情を持っている場合,孤独感は単に憎む時よりも強くなることがあるそうで,これまた興味深いなと思いました.

寂しがり屋はなぜ動かないのか

最近オックスフォード辞典に”hikikomori(引きこもり)”という言葉が新たな言葉として登録されたそうです.

引きこもりというと孤独を抱えて自宅にこもっているようなイメージが有るのですが,引きこもりに限らず,なぜヒトは孤独になるとあんまり動かなくなるのでしょうか.

この論文は孤独感と身体活動量の関係について調べたものです.

Loneliness Predicts Reduced Physical Activity: Cross-Sectional & Longitudinal Analyses

結論を述べると想像の通り孤独感が強いヒトは身体活動量も減るという結果が出ているのですが

こういった現象が起こる背景として,一般に孤独感というのはヒトの抑制を弱くする働きがあるためではないかということが述べられています.

抑制が弱くなるというのは夜中に甘いモノを食べたり,だめだとわかっていてもタバコや酒をやめられなかったり,働きたくないから休んだりと,ついつい楽な方に,快楽がある方に流れやすくなるということで

これは本人の意志の問題というよりも,嗜好や嗜癖以前に単純な理性を働かせる必要がある認知課題

(ストループ課題など:https://ja.wikipedia.org/…/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AB%E3%8…

でも寂しくなると成績が低下するということがあるようです.

つまり

孤独感

抑制機能の全般的低下

必要以上には体を動かさない

身体活動量低下

というような流れがあるようで,孤独感というのはヒトをストイシズムから遠ざける働きがあるのかなあと思いました.

鏡の世界に生きる:あなたはなぜ孤独なのか

自分も孤独感が強かった時期があるからよく分かるのですが,孤独な人の心の中に入っていくのはなかなか容易ではありません.

こちらがいくら親しくしても心を開いても仲良くしようとしても,孤独な人間というのはなかなか心を開いてくれないということがよくあると思うのですが,なぜ孤独な人は,人と仲良くなるのが上手ではないのでしょうか.

この論文は孤独感と信頼感の関係について調べたものです.

Loneliness and interpersonal trust.

研究では503名の大学学部生を対象に行っているのですが,結論を述べると,孤独感が強ければ強いほど,他者を信頼しない傾向があることが示されています.

これに加えて,孤独感の強い人ほど,他者も自分を信頼していないと思い込んでしまう傾向が強いことが示されています.

近年の研究から,他者の心を推察しているときは,自分の思考システムをベースにして他者の心をシミュレートしていることが考えられていますが

他者を信頼できず,また信頼されていると感じられないのは同じ心の両面なのかなと思いました.

なぜお金を追いかけると不幸になるのか

現在4歳の子どもがいることもあって,昔話に目を通す機会が大分増えたのですが,古今東西の昔話に共通するテーマとして欲張りすぎると不幸になるというものがあります.

花咲かじいさん,こぶとりじいさん,イソップ物語,いろいろいろいろモチーフを変えてやってくるのですが,本当に人は欲を張りすぎると不幸になるのでしょうか.

この論文は孤独と主観的な幸福感の関係について,お互いにどのような影響を及ぼしうるか3年間時間をかけて追っかけて調べたものになります.

On the Reciprocal Association Between Loneliness and Subjective Well-being

結果を述べると孤独感と主観的な幸福感は若干非対称な関係性になっているようで,主観的な幸福感のほうがより強く孤独感に対して影響を与えることが示されています.

著者はこの非対称の原因として

西洋的な価値観ではより多くを得ることが幸福につながるが,そのためには利己的な行動が多くなり,人とのつながりを悪くするような行動も増え,

長期的に見た場合,人を孤独にするからではないかということが述べられています.

これが嘘か本当かは分かりませんが,そうかと言われればそのような気もして

何事も中庸が大事なのかなと思いました.

まとめ

このように孤独というのは人の行動を大きく変えるし、

むしろ孤独を避けようとする心身のダイナミズムが社会を作り動かしているのかなという気もします。

様々な技術革新が進み、働くことも生きることも独りで完結できる世の中だからこそ、

孤独を埋めるビジネスが利益を生み出す余地も大きいのかなと思いました。

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