半側空間無視とネットワーク

臨床場面でしばしば遭遇する脳卒中に関連する症状に半側空間無視というのがあります。

この半側空間無視では殆どの場合、左側への注意が低下し、歩いていても食べていても左側のものに気づきにくいという現象が起こります。

この半側空間無視は、患者さんの経過を見ていると発症後、症状が改善するものとなかなか改善しないものがありますが、これは神経学的にはどのような仕組みが関係しているのでしょうか。

今日取り上げる論文は、半側空間無視症状を示す患者の脳活動について、時間経過を追って調べたものです。

左側に気が向かないという半側空間無視の症状ですが、この現象は大きくは2つの仕組みに分けられます。

一つは過剰に右側にだけ注意が向いてしまい、その結果左側に気が向かないというものと

もう一つは左側への注意のスイッチングができないというものです。

上の図で示すと右半球の活動が低下して、それとバランスをとるように代償的に左半球の活動が増大することで右側への注意が過剰になりますし、

もう一つは注意のスイッチング(注意の焦点を切り替えること)に関わる領域がうまく働いていないと注意を右側から左側へ切り替えることが難しくなります。

つまり右側にばかり気が向いてしまい、なおかつそれを修正しづらい(切り替えにくい)というところが半側空間無視の症状になります。

この研究では11名(平均年齢60歳、女性8名)の右前頭-頭頂領域の損傷により左半側空間無視を示した患者の脳活動について、

発症後早期(3-4週)と慢性期(6ヶ月以上)で機能的MRIを使用して調べているのですが、

注意のスイッチングに関わる頭頂領域が損傷していなくても、その領域に連絡する腹側前頭領域が損傷することで二次的に頭頂領域および後頭領域の活動が低下し、結果半側空間無視症状が出現すること、

また回復例ではもともと構造的には損傷を負っていないこれらの領域の活動が回復し、半側空間無視症状も改善することが示されています。

電車でもある路線で脱線事故が起こると、他の路線の運行に支障が起こることがありますが

脳の中でも同じようなことが起こるのかなと思いました。

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参考URL:Neural basis and recovery of spatial attention deficits in spatial neglect.

【要旨】

半側空間無視は、典型的には側頭頭頂または腹側前頭皮質への局所損傷に関連している。 この症候群は自発的な部分的回復を示すが、空間無視の症状とその回復に関する神経基盤はほとんど知られていない。 我々は右前頭領域損傷後の無視症状(右方向への注意の偏りと注意方向の変換の障害)と構造的に損傷のない背側および腹側頭頂部領域の異常な活性化が相関を示すことを示している。 さらに、これらの注意障害の回復は、これらの領域内での活動の回復と再調整と相関している。 これらの結果は、分散型神経構造内の活動の再重み付けに基づく回復のモデルを支持し、行動障害は損傷部位の構造変化だけでなく、遠く離れているが機能的に関連する脳領域の生理学的変化にも依存することを示す。

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