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半側空間無視と視線の動き

半側空間無視を臨床場面で評価するときにスクリーニング的に使うものに線分二等分試験というのがあります。

これは簡便ではあるのですが、評価の精度としてはいまいちすぐれないことも報告されていますが、

半側空間無視患者はこの課題においてどのような方略を使ってどのように視線を動かしているのでしょうか。

今日取り上げる論文は、半側空間無視患者を対象に様々な長さの線分を示し、その時の視線の動きと患者によって判定された「中点」について詳しく調べたものです。

対象になった被験者は半盲、もしくは四分の一盲を合併する慢性期の半側空間無視患者4名で

正面に置かれたディスプレイ上に示された25ミリ、100ミリ、200ミリの線分を二等分するときの視線の動きについて、

線分提示前の視線の固定点も含めて、各長さに付き10回ずつ行い調べています。

以下は視線の動きを示したものですが(黒い点が最初の注視点、線分の長さが視線が動いた範囲)

上図参考URL:

図で示すように患者の多くは最初のスタートポジションで視線を結構な割合で左側へ寄った場所で固定しており、

その後右側へ視線を動かしているのですが、結果として中点を多くの場合右寄りのものにしていることが示されています。

半側空間無視患者は代償的に視線を左方向へ寄せていることが様々な研究から示されていますが、この研究においても同様にスタートポジションが左側へ寄っています。

このような代償的な方法が見られるにもかかわらず右寄りのものになった理由として、

視線の動きを見てみると最初の固定点を起点として左端を探すような動きが見られないことが影響しているのではないかということが述べられています。

この実験では各長さで10回行っていますが、結構試行毎にばらつきがあるなと思ったり、

論文では触れられていませんが、25ミリという短い線が他の長さと結果が少々異なる点については

視覚認知における自己中心座標や対象中心座標というものが関連しているのかなと思いました。

研究においてはその平均値だけで考えるだけでなく、各試行についても考察を巡らせることが大事なのかなと思いました。

参考URL:Approaches to subjective midpoint of horizontal lines in unilateral spatial neglect.

【要旨】

一方的な空間無視を有する患者は通常、長い線を二等分するときにより大きな右方向のエラーを伴うが、時には非常に短い線(例えば25mm)をに等分した時には左方向のエラーを示すことがある。無視症状を有する患者がさまざまな長さの線に対して異なる方法で主観的な中点に近づくかどうかを明らかにするために、線を表示する前の時点からの注視の動きを分析した。左無視を有する4人の患者は、液晶ディスプレイ(LCD)モニターの中央を横切って現れた200 mm、100 mm、および25 mmの線を二等分するよう指示された。線を表示する直前の注視は、平均して線の中央付近に位置していた。 3人の患者は、200 mmと100 mmの試験の70%以上で、左側から主観的な中点に直接接近した。主観的な中点は、左端の注視点と右端との間の「注意された」セグメント上で左方向に頻繁に逸脱しましたが、全体的には右方向に移動した。 3人の患者は最初に左の終末点を探すために25 mmの線を探った。その後彼らは、左側から主観的な中点に近づく左方向の誤差で同じ線を二分した。残りの患者は線の長さとは無関係に約半分の試行において正しい終末点を越えて探索し、その後右側から主観的な中点に接近した。 200mmおよび100mmの試験では、主観的な中点が、注意された右のセグメントを正しい終末点に近い方に分割した。線を超えて右側へ注意を向けている場合では、患者は主観的な中点をその点に近づいた側に向けることがある。非常に短い線の二等分では、左の端点からのアプローチは主観的な中点の左方向の誤差を引き起こすかもしれない。しかしながら、より長い線については、線表示の直前の固定からの左方向の範囲がほとんど探求されないので、左側からの接近は全長に対する二分の右方向の誤差をもたらすかもしれない。

コメント

こういうのは人間の評価とも似ているなと思う。

いろんな人間がいて、状況状況で同じ人間でも様々な矛盾した顔を示す。

こういった矛盾した性質は平均すると何の意味も示さないけど、矛盾した行動のその中にこそ、

それらを統合するようなその人の行動原理が垣間見えることがある。

臨床のセンスというのは平均を求めるだけでなく、矛盾を統合する何かを見出す能力のような気がして

臨床と研究というのは噛み合うこともあれば噛み合わないこともあるんだろうなと思ったりです。

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